収穫

収穫

梅雨から夏
雨の花の彩りも惹かれるが
店先をにぎやかに彩る
果実も惹かれるものが多い

自然に実る
旬を偽らない果実が好きだ
春に花をつけ
雨にうたれて成熟を待つ
自然の果実たち

特にこの時期
桃の仲間や木苺に惹かれる
そして惹かれるあまりに
子供の記念樹とかこつけて
とうとう庭先に何本か
李の木を植え込んで
成長を見守ることになった

今年も春先
緑白色の花をふさふさとつけた木は
花の一つも無駄にしないかのように
枝にひしめくほど
はりはりとした大きな実を
たわわにつけ
一雨ごとに熟してゆくのを
楽しみに見守って
梅雨の晴れ間のある日に
子供と小さな収穫祭をした

子供がもいで私に手渡す果実は
光るほどに張り詰めていて
雨に当たったせいで
果皮が爆ぜたものもあったけれど
どれも甘酸っぱい香りがして
果皮を隔てたその下には
赤々とした果汁が透けて見える


 まるで人の皮膚みたいね
そう言うと
 お母さん なんてホラーな事を
子供がそう言って笑う


いい香りがするホラーな果実を
ひとつ
服の裾できゅっと拭き
実りを確かめるように齧る

皮に歯を立てる
ひとの皮膚ほどの薄い果皮を
極限までのテンションに張り詰め
歯の進入に抗いながら
それでも最後には
ふつりと音を立てて果皮が破れ
柔らかい果実は歯の侵入に観念し
貪られるままに
香りを漂わせて
甘い滴りを生む

果物って
ホラーじゃなくて
エロティックなんだよなぁ
好きな果物を味わうとき
いつもそう思いながら味わう
好きな果実が多い今の時期は
私にとってはある意味
一年で一番官能的な時期でもある

とはいえ
夢中になって収穫している
子供にはまだ
こんな話しはできないけれど
そのうちこんな話も
出来る日が来るのかな
今はまだ色気より食い気だけれど

スーパーの袋が三つ
あっという間にいっぱいになって
取りに来た妹や母と分けながら

 たくさん採れたから
 これで何か作ろうか
 ジャムとかゼリーとか
 パイなんかもいいね

そう言うと
蚊がとまった頬で振り向いた
子供の笑顔がはじけた

201507

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テーマ : ある日の風景や景色
ジャンル : 写真

歯医者さん

歯医者さん


歯医者ってね
子供のころから苦手で
恐怖の対象でしかなかったんです

ある日のこと
 買い物に行くからついておいで
 帰りにアイス買っていいから
祖母の甘い言葉についていったのは
幼稚園の頃だっただろうか

買い物に行くといったのに
薬臭く
無機質な待合室に座らされ
問診表を書く祖母に
子供ながら
 あ これは騙された
と言うことに気づいた

名前を呼ばれて
ビニル張りの冷たい椅子に座らされ
顔に向けられた強い光に
ただただ 恐怖感しかなかった

ビニル張りの椅子 強烈なライト
丁子油のにおい ステンレスの器具が出す音
そして神経を直接触る
今まで経験したことのない痛み

あまりの恐怖感に泣いて暴れて
 この子はもう看らん
 連れて帰れ二度と来るな
怒鳴られて家路についた思い出

今どきは
歯のケアや歯科医についてのあれこれの教育は
早期からされていて
小さい子供にもわかりやすく説明もされている

 歯は一生使う大切な器官です
 子供さんの歯を大切にし
 健康な歯を育てましょう
 歯科医に子供さんを騙して連れてこないでください
 騙して連れてこられた子供さんは
 心にトラウマが残ります

思わず心の中で
あの頃の私が小さく手を挙げる

三つ児の魂何とやら
もう
あの世が近くなってきているというのに
未だに歯医者は恐ろしい

自分では何をしているか見えないのも
怖い原因の一つでもあり
いつビリッと来るかがわからないのも恐怖だ
そして
 今やってるのはいったい何?
 この薬は何の薬?
施術中は口を開けているせいもあって
その場で聞けないのも不安の一つ
本当に不安でしかないのだ

わからないというのは
本当に恐怖心を煽り立たせる

だがしかし
神様の気まぐれか
ネットの友人が歯科医だと判明し
その人に自分の疑問を
洗いざらいすべて
小さなことまで聞く機会を得たのだ

今まで怖かったこと
こうやってガリガリやるのは
何の意味があるのか
どんな器具を使っているのか
口の端につける器具の
アラームの音の意味
今 自分がしている治療の方向性

果ては
歯ブラシはどれがいいの
そんなことまで聞くと
すべて丁寧に答えてくれて
おかげでそれ以来
歯医者への恐怖心がずいぶん減ったのだ

持つべきものは
いろんな分野の友人である
しかも専門家に聞くので
間違った情報は提供しないし
 あぁ
 患者さんはそういう風に思ってるんだ
 そりゃ怖かったね
などと
あちらも納得したり感心したりしている

お互い良い機会を持てたねと
笑いながら歯の話もできるようになった

それでも
久しぶりに歯医者の予約を取るときは
ある種の緊張感を持つが
 久しぶりだったら
 歯石取りとスケーリングからだから
 それで恐怖感の肩慣らしして
などとアドバイスをもらい
気楽に受診できるようになったのは
有難いことである

今回も久しぶりの受診
歯医者さんはこれが最後になるといいなぁ
そんなことを思いながら
かなり久しぶりに
予約の電話をかけたのだった


20190216

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テーマ : ある日の風景や景色
ジャンル : 写真

蘇生

夕食~

夜八時
実家で母を看ながらの食事

食事を喜んで食べる母と
子供の学校の話を聞きながら
ほっと和むひと時

 お代わり持って来ようね

そう言って立ち上がったとき
携帯が鳴り出した

私の携帯は怠け者だ
一日のうち 一度も鳴らない日もある
不要なメールや電話を一切しないので
子供を起こす時間 母の介護の時間
日に何度か決まった時間
特定の時間に栞を挟むように設定した
アラームだけしか鳴らないない日もある

番号を知っているのも
ほぼ親しい身内だけなのに
知らない番号が表示されている

 誰だろう・・・・・・

台所へ歩きながら 
受話器の記号をスライドさせて
 はい
と言うと
 あ、恐れ入りますがこちらは『ななを』さんのお電話ですか?
純朴そうな男性の声が聞こえてきた

聞き覚えのない声
そして私を本名でなく
ウエブ上での名前で『ななを』さんと呼ぶ

誰だろう

頭の中でいろんな人の顔と名前を
早送りで思い出してゆく
この人 ちがう
あの人 いやこれもちがう
自分の記憶の中にない声
もしかして私も物忘れが始まったかしら
焦りを必死に隠しながら名前を聞こうとしたとき

 あ、申し遅れました
 わたくしネットで交流させて頂いておりました
 Iと申します
と 電話の向こうの声が告げた

その人は
私がネット上で文章を書き始めた頃
最初にやり取りを始めた人で
ネット上の決まりごとや
人との関わり方などを教えてくれた
私にとっては兄や先生のような人なのだ

一度
地元の山で取れた山の幸のお裾分けを頂いて
そのときに住所や名前を送信したっけ
そんなことを思い出す

聞いたことのない声のはずだ
一度も電話で話したことのない人なのである

その人が病に倒れたと風の噂に聞いてはいた
倒れた数ヵ月後に数回ブログの更新があったけれど
十年前に更新が止まったままで

 命はとりとめたけれど
 記憶の回路がうまく繋がらないので
 日々苦労の連続です

そんなメールが来たきり
ふっつりと消息が途絶えてしまった

病と言うデリケートなことで
プライバシーに関わることでもあるので
ご家族にお聞きするのも憚られ
遠い九州から
お元気でいることを祈ることしかできなかった
そんな十年前の出来事が
一瞬で泉が沸き上がるように思い出されたのだ

そのあと十分ほど話したけれど
舞い上がってしまい
何を話したかあまり覚えていない

 長くそのままだった携帯の機種変更のため
 住所録の所在確認の作業中でした
 あなたがこの電話番号を使っていてくれてよかった
 またあなたの詩を拝見させてください
 あなたの詩は
 名前を隠されていてもわかります
 まだあなたが書いていてくれてよかった
 それではまた

そう挨拶して通話が切れると
しばらく携帯を握ったまま
台所にぼーっと立っていた

私の住所録の
行方不明者の名前がひとつ消えて
懐かしい名前に
呼吸が戻って
血液が通い始めた
師走の台所での出来事

2017/12/20


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テーマ : 詩・想
ジャンル : 小説・文学

肩



朝 目覚めると
肩から腕が動かない
冷える日は特に
指先までぴりぴりとして
寝返りも打てない

年はとりたくないわねぇ

自分にはあまり関係ないと
頭の片隅にもなかった言葉が
最近ふと 口からこぼれる

そういえば昔
もよくこぼしてたっけ
 肩が痛いのよ
 去年は右だったんだけど
 今年は左
 年はとりたくないわねぇ

気づけば
今の私はもう
あの頃のと同じ年代だ

年齢を重ねて
体のあちこちが
若い頃と変わっていく

経年変化で
味が出てくることもあるが
劣化していくことも否めない

不意に出した左腕に
一閃の電気が走ったように
鋭い痛みに手を引っ込め
その動きにまた電気が走る
思いがけない刺激に
汗が噴き出す

痛みだけではなく
何とも言えない不甲斐なさに
涙ぐみながら
肩を押さえて声も出せず
しばらくじっと佇みながら
あの頃のを思い出していた

ほんとだね
年はとりたくないんだけれど
その年代にならないと
分からないこともあるもんねぇ

こうやって少しずつ
自分も年を重ねながら
いろんなことを知っていくもんだと
肩をさすりながら
気持ちを切り替える

これから先
もっといろんなことを知っていくんだろう
痛みも苦しみもあるかもしれない
でもそれを冷静に見つめていくことに
答えがあるのかもしれない

何事にも目をそらさずに
受け止めていくしかないと
肩の力を抜くと
少し開けた窓の隙間から
沈丁花の花の香りがした

201302

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テーマ : ある日の風景や景色
ジャンル : 写真

冬の朝に感じる「生きて育つ」ということ

育つと言うこと

 目が覚める
布団から這い出して
重い気持ちの背を押しながら
台所に立つ

毎年 これからの季節
まだ目の覚めていない台所は
しん と 床まで冷えている

ガス台でお湯を沸かしはじめると
あたたかい湯気がわき
やっと台所が眠い目をこすりながら目覚め
そしての中もそれに連れて
体温を取り戻す

食器の音
蛇口から出る水の音
水筒に注ぐお湯の音
食のお味噌汁のにおいや
卵焼きの焼けるにおい
茶碗によそったご飯の
つやつやした粒から上がる湯気

空気の中に存在する
湿度というのは
生き物が存在する空間であるという
存在証明のようなものなのかもしれない

いろんなにおいや
あたたかい湯気が血液となって
に満ちることで
は生命を持つんだな
そんなことを思う

においもあたたかさもつめたさも
水分がないと伝わりにくいものだ
氷を触っても
表面が乾いていると冷たさを感じにくいように
氷と指の間をつないで伝える
水分があるからこそ
温度も伝わるということか

ということは

湿度とは
感情と感情のなかに流れて
気持ちを包み込んで伝える
「機微」のようなものなのかもしれない

かたくなに黙り込んでしまった
いろんな感情の間に入って
 あぁ こう言いたかったんだな
そう慮(おもんぱか)れたり気づくきっかけを
感情に直接触れなくても教えてくれる

見えないけれど
何かを感じさせるための
大切なもの


携帯のアラームが鳴って
子供を起こす時間の最終通告を突きつける

夜更かしを覚えたせいもあって
少し反抗期の子供はなかなか起きてこない
特に昨日はお互い意見が合わなくて
あまりいい雰囲気でないまま言った「おやすみ」

どちらかが折れないと
仲直りは出来ない

ここは私が折れるかな

あたたかい湯気で温まった空気を
大きく吸って子供の部屋のドアを開けると
子供はもう起きて制服に着替えていて
少しきまり悪そうに

 お母さん おはよう
 昨日はごめんなさい

そう言って食卓に着いた

 もういいよ
 また後でゆっくり話そうね

と言うと頷きながら
いただきます と食を食べ始めた

あったかいごはんおいしいね
そうだね
そんなことを話しながら
昨日の意見の違いのわだかまりが
少しずつとけて
もつれた心もほどけてゆく

食事はあたたかく
もあたたかく
そして心もあたたかく

子供も私も
こので生きて
こので育っていく

201512

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テーマ : 今日のつぶやき。
ジャンル : 日記

介護中

介護中

介護中なんです

でもそれなりに楽しんでやってます

五分おきに何度も同じことを聞く
今初めて聞いたみたいに
 へぇ そうなのね
とこたえたら
その記憶は一旦捨てて
また同じことを聞かれても
 へぇ そうなのね と
また今初めて聞いたようにこたえる

何度も何度も同じ話が
漣のように繰り返される

多分の記憶回路は
昔懐かしいラジカセの
オートリバース式

そしてちょっと壊れている

彼女はリフレインを繰り返しながら
何度もはじめてを繰り返す

何かを探しながら
何を探しているのか忘れ
果ては探してることを忘れ
何かの拍子に探し物を見つけて手にとると
それをまたどこかに仕舞う
自分が忘れてしまう
記憶の手が届かない場所に

毎日使う調理道具を仕舞う場所が
毎日変わっていて
それもまた仕方がないかと
私の記憶の中の
「いつもここにあったのに」を
リセットする

毎日同じだけど 毎日違う
「いつものこと」と「あたりまえ」

自分に余裕がなくなってくると
状況は変わるのかもしれない
だけどどう付き合っていけばいいのか
おばーちゃんで介護は少し学んだからね
このくらいは余裕綽々
まだまだ毎日笑顔で過ごせている

だけど 目が離せなくなってきて
家からあまり離れられなくなった

まぁ仕方がないか
いずれは自分もこうなるのだ

まだ徘徊とかがないからいいのだけれど
夜のお散歩が始まったら
私も一緒にお散歩するつもり
夜道の一人歩きは危ないからね


子供の頃
愛されなかった悔しさに
のしつけて愛し返してやろうと思う
あんまり愛されなかった子供からの
せめてもの復讐と嫌がらせだ
いつまでも付き合ってやるよ

こんなじゃ仕事にもいけないから
昼御飯と晩御飯も
あなたのそばで毎日作ってやる
ドライブがてら買い物にも連れて行ってやる
何度も同じことを聞かれても
 へぇ そうなのね と
毎日何度でも
初めて聞いたみたいに答えてやる

昔 上手に言えなかった 
さん」って
何度も言ってやる

どうだまいったか


なんて照れ隠ししながら
日々に対応中

そんな私の毎日


201509

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ジャンル : 日記

夜の愉しみ

夜の愉しみ

水を帯びた冷たい風に
窓を開け放つと
露を含んだ風が
揺らすカーテン

オレンジ色の
アスタリスクの形した
小さな花の香りが
揺蕩(たゆた)いながら流れ込み
藍色の世界を包む

冷えた肩に風を纏い
床に座って壁にもたれて
新月の空に散る
星をぼんやり数えたあと

目を閉じて
音を探る

虫の音
草の葉が触れ合う音
布と肌が擦れる音
乱れることのない静かな吐息
遠くで誰か話す声
猫の足音
子供の寝返り

沸騰したお湯の
小さな泡が上がる音
木の床の上に
身を投げる針の着地音

眠りに包まれ
聴きのがしているけれど
静かなようで
の世界は音に満ちている

秋の夜長
香る世界で音を探す愉しみ

一人 しずかに
孤独を愛でる時間


201111

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テーマ : ある日の風景や景色
ジャンル : 写真

春のバス通り

バス通り

ふと 手元を見れば
視界がぼやけた

今まで
こんなことはなかったのに

目の焦点が合わない
根をつめて何か書いたり
集中して文字を読んだりしたあと
一息つこうと顔を上げれば
世界がぼやける

今までなかったシチュエーションに
戸惑いながら眼科の門をくぐる

簡単な問診のあと
看護師さんが柔らかな笑顔で
 今までこういうことはありました?
と聞く
 ここ最近集中したあとに視界がぼやけます
と答えると
 ん~……そうですかぁ
そう言ってちょっと考えた後
そのまましばらくお待ちくださいと
看護師さんが立ち去った

どうしちゃったのかな
疲れ目かしら
そんなことを考えていると
名前を呼ばれて検査室に案内され
操縦席のような椅子に座るよう促された

うす暗い部屋の中
顕微鏡のようなスコープを覗き
焦点が合ったり外れたりする
小さな絵を覗き見たり
覗いていると
空気がプシュッと噴出する機械で
圧を測ったり
瞳孔が開く目薬をさされたり
一通りして
待合室で待つように言われる

もしかして
なにか大きな病気なのかしら

普段したことない検査の数々に
少し不安になりながら待合室で座っていたら
ほどなく名前を呼ばれ
診察室に入る

暗い診察室
またも顕微鏡のような機械を覗き込むと
強い光を当てられ
ふむふむと頷くように
眼科医に目を覗き込まれる
開いた瞳孔が光をいっぱいに受け
目がちかちかするどころか
視界が白飛びして
眩しいというより
目の奥がつんつんするような
錯覚さえ起こす

室内の蛍光灯が点き
眼科医がスクリーンに映ったカルテを見ながら
うーん と言葉をためて
そのあと一言

 そうですね
 老の入り口に入ったというとこですかね

と告げた

あぁ そうなんだ
自分もそういう年齢になったのか
あまりにもずっと走り続けていて
そんなことさえ気づかないままに
日々過ごしていたのか

あまりにも自分のことを
ケアもフォローもせず
ぞんざいに置き去りにしていたなと
反省しながら
ほんのちょっと起きた
目に見える異変に
案外いろいろ考えるもんだと
自分の意外なもろさに
ほんの少し自嘲しながら
支払いを済ませて
病院を後にする

 めんどくさいけど
 鏡買わなきゃだなぁ

いつもだったら
雲のない空を見上げ
気分良く伸びの一つもするのだけれど

点眼薬のせいで
いつもと違う白く眩しい世界
ほんの少し恨めしく
今日だけはうつむいて
早足で家路を急ぎながら
そんなことを考えた

黄砂舞う日向の
春のバス通り

201204


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ジャンル : 写真

CLAWL (クロール)

<CRAWL>

夜明け前
開け放した窓から流れ込む
水を極限まで抱え込んだ
冷えた空気でつくった
誰もいない
自分の心のプール

揃えた両足の爪先から
静かに滑り込む

水から上げた手の指先から
伝った雫が落ちる音が
ぴち と響く
空虚で肌寒い
静かで広い
薄暗さが残る心のプール

誰とも競いたくないから
勝つための泳ぎ方はしない
力強さもスピードもない
自分を水に放ち
委ねるために泳ぐ

できるだけ遠くに手を伸ばして
肩を入れて
水の流れに合わせて
体をしならせながら
抵抗を極限まで減らして
水をすり抜ける

音もたてずゆっくりと
切り裂いてゆく水面(みなも)に出来た
大きな亀裂のような傷を
もうこれ以上裂ける事なかれと
いなして撫でるように
スロー再生
静かに泳ぐクロール

飛沫も踊ることなく
ゼリーのように波打ち
揺れる水面(みなも)

誰もいない追憶のプール
無声映画のように
ただ 音もなく
粛々と

以前なら

泳ぐ私の上に下に
冷たい水ではなく
熱い肌の君がいたのか
それさえも忘れてしまうほどに

私は
冷たく静かな
水に棲むことに慣れてしまった

秋の
開けた窓から流れ込む空気に
前髪を湿らせながら

街が動き出すまで
私はひとり
冷たい水の中で
泳ぎ続ける


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テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

SMILE WITH NEW LIFE

SMILE WITH NEW LIFR

生活が 新しくなって
パソコンも買い換えた
5年以上も使った
私の相棒

チャットをして
仕事もして
調べ物をして
詩を書いて
メールを送って
写真のデータも入って
ある意味
私の日々の記録帳

家族や恋人以上に
私を知る機械も
情報の多さと速度に
とうとう音をあげた

お疲れ様

古いPCを片付けて
その横で新しいデスクを組む

買ったときは
最先端から2番目の機種で
オーバースペックかな
そう思いながら買ったのに
時の流れは残酷で
今なら当時と同じ値段で
数倍いいスペックのものが買える

真新しいダンボールの梱包から
新しいタワーと大きな画面を出して
恭しく据える

ケーブルをつないで
電源を入れたら
勝手にセットアップ
これは以前と違って簡単か

新しいインターフェイスと
タッチが変わったキーボードに
戸惑いながらも
いつかは慣れるわと
まずはメールを打ってみる

今まではスムーズにできたことが
急にできなくなっていて
あら と思う

いつもキーをたたいて
変換を押せば
使い慣れた
いつもの顔文字が出ると思っていたのに
新しい生活(パソコン)は
単語登録もできていなくて

あたりまえだった(^-^)
「にこ」と打ち込んで
変換キーを何度押しても
笑顔が 出てこない

新しく始めた生活は
笑顔さえ
単語登録しなければ
出てこないんだと

新しいということは
今までの当たり前が
当たり前でなくなる
可能性があるということなのかと
今更気づいてはっとした

まっさらな場所に
重ねていく毎日は
単語登録の作業にも似て
何もない時間や空間を
自分の形に日々上書き更新していく

私も
新しい生活に
自分の色をつけていこう

いろいろな表情や言葉で
新しい生活を彩っていこう

まず最初は
笑顔からね

(^-^)

201107

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プロフィール

藍音ななを

Author:藍音ななを
詩作の長いブランクを経て1995/11から散文
2006/9から詩を書き続けています。
空と雨を何よりも愛しています。

血液の82%はコーヒーでできています。
きっと できています。

写真撮影は注釈がないものについてはすべて
撮影者:藍音ななを
撮影機:au Win W41K(携帯by京セラ)
2008/2からau Win W61CA・softbank 940SH
2016/7からau TORQUE G03
を通して私の目が見た世界です。

著作権は放棄していません。
無断転載/無断引用/複製は固く禁じます。

●●このブログはリンクフリーです●●
綴った詩がお気に召しましたらお気軽にリンクをお持ち帰りください。その際お知らせくだされば相互リンクも貼らせていただきます。コメントもお気軽にどうぞ。

*アダルトとスパムサイト様はご遠慮させていただきます。


ネット詩誌 MYDEAR所属
福岡県詩人会所属
日本詩人クラブ所属

2013.6.9 藍音ななを
動画:夢路

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